リンゴ
「ビートルズのメンバーを4人全て挙げろ。」と言われたら、どれだけの人が全員挙げられるだろうか。もちろんビートルズが好きな人や、ちょっと昔の洋楽を聴く人からしたら愚問だろう。おそらく、ジョン・レノンとポール・マッカートニーは、あまり音楽に興味がない人でもきっとすぐ出てくると思う。次点は、名前のインパクトで意外とリンゴ・スターが出てきて、最後にジョージ・ハリスンだろうか。僕の経験則からいくとこんな感じだ。
今回は、その個性あるメンバーの中でもリンゴ・スターと僕の好きな彼のリードボーカルの曲を紹介したいと思う。これからリンゴについて僕の主観的な意見も少し混じりますが、リンゴの大ファンがいたら、最初に言っておきますがごめんなさい。誤解してほしくないのは、僕もリンゴ大好きです。
リンゴ・スターはビートルズの4人の中でも、何かと地味な扱いをされやすい人物だ。もちろん周りが目立ちすぎというのもあるし、一つの理由に、彼が作ったり歌ったりしている曲が非常に少ないというのがある。公式に発表されているビートルズの曲は全部で213曲あるが、その中で、純粋にリンゴ単独で作った曲はなんと2曲しかない。まあその2曲はとても良い曲なんだけど、とにかく2曲しかない。もちろん他にリンゴが歌っている曲もあるのだが、(例えば有名どころでいくと Yellow Submarine)主要なものはほぼポールが作っている。ジョージも地味と言えば地味だけど、彼はソロになってから才能を爆発させたというのが大多数の見方なので、そういった意味でやはりリンゴはちょっと地味だ。すごくひどい言い方をすると、『天才の中に埋もれた凡人』みたいな印象があるかもしれない。
『(500)日のサマー』という映画をご存知でしょうか?けっこう有名なラブストーリーなのだが、主人公は、トムという男の子とサマーという女の子の2人で、実はこの映画の中で2人がビートルズで誰が一番好きかについて話す場面がある。この会話の中で、サマーがリンゴが一番好きと言うと、トムが「リンゴのファンなんて誰もいないぞ!」というやりとりをする。おいおい言いすぎだろと個人的には思ったのだが、まあリンゴってそんな扱いが多いんです。ちなみに、この会話には続きがあって、そのトムの発言に対して、「そういうところが好きなの。」ってサマーは返答するのだ。個人的にはこれにグッときた。リンゴが一番好きなんて言う女性会ったことない。そもそもビートルズ が好きっていうだけでグッとくるのに、ましてやリンゴなんて...最高だと思う。
桑田佳祐もどこかのインタビューで、「なれるならリンゴが良い。リンゴならなれそうだから。」みたいなことを言っていた。
散々ここまでリンゴを貶めるようなことを書いてきたが、僕が言いたかったのはそういうことじゃない。さっきのサマーの発言に戻るけど、この言葉ってとても深いなって思う。誰もファンじゃないところが好きって言ってるけど、何よりも大事なのは、彼がビートルズの一員だったことだ。仮に誰もファンがいなかったとしても、彼がビートルズ にいたということ、そこに存在意義があったことが大切なのだ。どんなグループにも、必ず緩和剤のような存在がいると思う。そもそもなんだかリンゴ自身そういう扱いを全く気にしていない気がする。そこがかっこいい。もし、ビートルズ がみんなジョン・レノンみたいな人ばかりだったら間違いなくカオスだ。エゴの集合体みたいになっていただろう。もちろん全ては想像でしかないけど、リンゴという存在が、ああいった強い個性のぶつかり合いの中で、必要不可欠だったのだ。間違いなく言えることは、リンゴがいなかったら、絶対にビートルズはもっと早くバラバラになっていただろうということである。今で言う「愛されキャラ」みたいな感じかな。
こんな話の流れで、僕の好きな曲を一曲ご紹介したいと思う。
"With A Little Help From My Friends" という曲だ。
この曲は、ビートルズのアルバムの中でも最高傑作との呼び声高い "Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band" に収録されている。この曲の作詞作曲はジョンとポールが行っていて、リンゴがリードボーカルだ。僕がこの曲が好きな理由は、ジョンとポールのリンゴへの愛情が伝わってきて、とても幸せな気持ちになるからだ。
例えば、
What would you think if I sang out of tune?
僕が音程を外して歌ったら君はどう思う?
Would you stand up and walk out on me?
立ち上がって僕の元を去ってしまうかい?
Lend me your ears and I'll sing you a song
耳を貸して。君に歌を歌ってあげる。
And I'll try not to sing out of key
そして、キーを外さないように頑張って歌うよ。
この曲をジョンとポールが作ってリンゴに歌わせていると思うとおもしろい。おそらくそんなにリンゴが歌が上手くないのを揶揄しているのかと思うけど、これをリリースしちゃうなんて、現代だったら完全にいじめだ。でもきっとそこに愛があるからリンゴも楽しそうに歌っているんだろうなと思う。
また、この曲は、リンゴと他のメンバーが互いに問いかけをして、それぞれが合いの手を打つといった形とっている。
Would you believe in a love at first sight?
一目惚れを信じるかい?
Yes, I'm certain that it happens all the time
いつも起こるって思ってるよ。
What do you see when you turn out the light?
灯りを消したら何が見えるの?
I can't tell you, but I know it's mine
言葉にはできないけど、僕のものだっていうのはわかる。
こんな感じだ。この掛け合いがとにかく微笑ましい。僕がビートルズの中での愛情を一番感じる瞬間だ。
そして、歌それ自体にも触れると、
What do you see when you turn out the light?
灯りを消したら何が見えるの?
I can't tell you, but I know it's mine
言葉にはできないけど、僕のものだっていうのはわかる。
ここは僕の中でも、ビートルズ の好きな歌詞で1、2を争うぐらい好きな歌詞だ。正直ちょっと哲学的に何を言っているのわからないんだけど、言葉では表せない、何だかふに落ちる、そんな感覚を抱かせてくれる歌詞だ。
冒頭でも書いたように、リンゴってビートルズの中でもどうしても少し脇役なイメージが付きがちだ。でもリンゴの曲を聴くと、人それぞれに役割や立ち位置があって、人と比べるんじゃなくて今の自分で良いんだ、とそんな気持ちを再確認させてくれる。
誰もファンはいないけど、そこがあなたの一番好きなところ。そんな風に言ってもらえれば、きっともうオールオッケーなのだ。